DAINAGASHIMA

Football Trainer/Coach in the Netherlands

DAI NAGASHIMA

サッカーのトレーニングができない日本

日本では「ポジショナルプレー」という言葉が話題のようである。

この言葉のキーポイントは「ポジション」と「優位性」であろう。

詳しい内容についてはここでは少し割愛。素晴らしい記事がたくさん出ていると思うので。

この「ポジショナルプレー」には3種類の「優位性」があり、ピッチ上でこの優位性を確保しながら、敵の長所をを消し、勝利を手にしていくための戦術であると言える。

■3つの優位性

「数的な優位:そのゾーンにおけるプレイヤーの数によるもの」

「質的な優位:そのゾーンにおける選手それぞれの質によるもの」

「位置的な優位性:そのゾーンにおけるプレイヤーが立つ位置の組み合わせによるもの」

 

 

オランダではこのようにきちんと定義はされていないものの(私が知らないだけかもしれないが。されていたら教えてください。)この観点においてトレーニングや試合でコーチングがされている。ひょんなことから「ポジショナルプレー」はオランダのお家芸だということを聞いた。リヌス・ミケルス、ヨハン・クライフの影響からこれは間違いないことであろう。しかし、本当に彼らだけの影響でそうなったのであろうかとふと考えていたところ、あることを思い出した。「オランダサッカーが強いのは国土に対して、サッカーフィールドの割合が世界中で最も大きいから」というものだった。これはオランダサッカー協会の人の話である。本当にそうかわからないし、必ずしもそれだけではないと思うが人口1700万人で九州くらいの大きさしかない小国オランダが強い理由の一つであることは間違いない。

少し調べてみると、、、、

オランダには2017-2018シーズンにおいて、2381のサッカークラブが存在し、その内プロクラブ、セミプロクラブが51、日曜クラブが1334、土曜クラブが836、トップチームを持たないクラブが160であった。そこでは約120万の人々がサッカーをプレーしている。これを多いと考えるか少ないと考えるか。(日曜チームは日曜日に公式戦があり、土曜チームは土曜日に公式戦がある。これはオランダ特有の仕組みである。)

(引用)

https://www.ad.nl/nederlands-voetbal/knvb-heeft-meer-leden-dan-ooit~a6811f38/

http://www.voetbalarchieven.nl/specials/de-voetbalkaart-van-nederland-2017-2018/

日曜チームのクラブを分布図で表すと

土曜チームのクラブを分布図にすると

トップチームがないクラブを分布図にすると

分布図を見てもらうとわかる通り、本当にオランダにはサッカークラブは多い。場所によっては違うクラブが隣合わせにあったり、自転車圏内に3つ4つのサッカークラブが存在する。さらに多くのチームを見てきたが、基本的に全てのクラブでは1チーム15人前後で、最低週2回、1時間半程度、ハーフコートでトレーニングをすることができる。そして、必ず週末にリーグ戦がある。さらに年会費はクラブによるが3万円から4万円の間である。月会費ではない。本当にサッカーの敷居が低く、誰でもサッカーのトレーニングを受けようと思えば受けることができるのである。

 

そろそろ本題に入りたい。前置きが少し長くなってしまったが、「日本はサッカーのトレーニングができない」のではないかということだ。サッカーのトレーニングとは何かということになるが、これも割愛したい。(割愛してばかりだが笑)というのもこれについてはオランダで活躍している先輩方が色々と発信しているので。

このサッカーのトレーニングとは何かということを学んだ後で、日本で話題になっている「ポジショナルプレー」というものの理解が活きてきて、これをトレーニングに落とし込み、それを選手が実践できるようになるはずである。

しかし、日本にはサッカーとそのトレーニングについて理解して、本当にそれを実践させたいと考えている人がそう多くないのではないかと思う。

なぜ、そう思うかと言うと、、、その一つとして、今でさえ良くなってきているとは聞くが、一つのグランドに50人から100人の選手が同時にトレーニングしているということをよ聞くからである。そんな環境ではサッカーのトレーニングはできず、「ポジショナルプレー」がどうだとかいっていても(「ポジショナルプレー」の議論があくまでも指導者のため、選手のためであるとして)なんの役にも立たないであろう。その環境で選手たちに「ポジショナルプレー」について説き、トレーニングしたところで3つの優位性を選手たちが体験し、学ぶことは到底できないであろうと考えるからである。

オランダでは指導者がまず、サッカーとは何かということを学び、サッカーのトレーニングを実践する方法を学んでいく。そこから、それぞれが色々なことを学び、加工していく。

リヌス・ミケルス、ヨハン・クライフの影響で多くのクラブがゲームを作るという戦略を選び、その先に「ポジショナルプレー」となるものを実践させようとした。幸いオランダにはそれをトレーニングできる環境があった。だからこそ、トータルフットボールたるものが生まれ、語り継がれ、どこのクラブでもゲームを作るということに重きが置かれ、いわゆるオランダサッカーというものが生まれたのではないかと思う。そう、「ポジショナルプレー」はオランダのお家芸。。。。

これは日本に対して否定的という事ではない。むしろ、逆である。

すでにプレーする環境が整ってしまっているオランダとそうではない日本では、伸びしろという点においては明らかに日本の大きいと思うからである。日本ではサッカーをするという環境を整えることが本当に難しいと聞く。自分の地元でも20年前はサッカーゴールのある学校の校庭が一般開放されていたが、今は全く開放されていないといったふうだ。変えられる部分があるならば変えたほうが良い。

ユーロとワールドカップを逃したオランダ、彼らは何かできることを今、血眼になって探している。

「ポジショナルプレー」といった理解と議論と共に、それを実践するための環境ということに対してのアプローチもあって良いのではないかと思う。少し支離滅裂だけどお許しを。

それでは。

昨年からチームを移籍して望んだ今シーズン。

なんやかんやで9月から12月までに繰り広げられたリーグ戦で優勝しました。

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全11チームで構成されたリーグで10試合8勝2引き分け負けなしという成績で終えることができました。負けなしで前期リーグを優勝したのはクラブの中でもU15のファーストチームと私たちだけでした。正直な気持ちを言えば上手くいきすぎたなと思っています。全ての運を使ってしまったのではないかと思うくらいです。

IMG_2173 IMG_2172 IMG_2171 クラブの人間はこのチームに対して全く期待をしていませんでした。シーズン前にクラブのアカデミーダイレクターにはこのチームのクオリティーは残念ながら、、、、(悲)と言われていたくらいです。悲しいことに父兄や選手たちも自分たちが優勝できるとは考えていなかったようです。

ある種の革命です。やっぱりサッカーとはわからないものですね。だから、面白い。

このウインターブレイク中に、なぜ上手くいったのかを自分の中で振り返ってみると、以前とは異なる点が2つありました。

1、指導する年齢

2、コーチングのアプローチ方法

U17のチームを今まで指揮したことがありませんでした。選手・チームのキャラクターと自分がたまたまマッチしたとも考えられますが、自分とその年齢の選手たちの相性が合ったのかもしれません。個人的にはU13が合っているのではないかと考えていましたが。(笑)

その監督、コーチに合った年齢のチームが必ずあると思います。監督としてそれがわかっていればある種の強みになりますね。皆さんはそれぞれ認識しているものなのでしょうか。自分がトレーニングしたい年齢ではなく、自分自身に合った年齢ですね。

次に2番目のコーチングのアプローチ方法についてです。

端的に言えば、試合に勝つということを前提にしながら、結果ではなく過程にフォーカスするということでした。文字で表すと簡単ですが、中々これが難しい。

例えば、試合で点をとった選手に声を掛ける場合、どのようにアプローチしますか?

(試合後、褒めるというアプローチをしたい場合。)

 

A、素晴らしいゴールだったね。まるでメッシのようだった。

B、あのゴールは練習の賜物だよね。だから点を取れたんだね。素晴らしい。

 

Aの場合、選手にとっては嬉しいアプローチかもしれません。監督やコーチから自分はメッシのようだと思われているからです。しかし、このアプローチには大きな違いがあります。Aは結果について、Bはその過程についてフォーカスしています。ある研究では結果ではなく過程にアプローチをした方が、人は成長していくという結果が出ています。この理論についてはおいおい紹介するとして、このアプローチを実践することによって選手たちの能力が伸びたのではないかと思います。まだまだ結果だけにアプローチしたコーチングや声かけをしまいがちですが少しずつ変えていければと思っています。

チームは生き物とよく聞きますが、生かすも殺すも監督、コーチ次第だなと改めて感じているところです。

 

さて、明日から後期リーグが始まります。後期リーグは4つのリーグの上位4チームで構成されたリーグになります。より厳しくなるわけですがこのリーグで2位までに入ると自動的に来シーズン、一つ上のレベルのリーグに参加できることができます。すなわち、昇格です。また、良い報告が出来ればと思いますが、今シーズンは過程にフォーカスし続けたいなと思います。決して言い訳ではありませんよ(笑)。

それではまた、半年後に(笑)。

ブログの更新がかなり滞っておりましたが、久しぶりの更新です。(笑)

先日、やっと長い夏休みが終わりシーズンが再開しました。

オランダでは他のヨーロッパの国と同様にオフシーズンがあり、その間チームのトレーニングは一切ありません。かれこれ1ヶ月半くらいでしょうか。その間、家族との時間を大切にしながら選手たちは普段できないことをします。家族旅行はもちろんのこと、他のスポーツをしたり、夏限定のアルバイトをしてみたりとそれぞれ多岐に渡ります。なんだか大人っぽくなって帰って来るわけです。また、このオフ期間があることで体も一回り大きくなり、怪我の痛みも癒え、フレッシュな状態で新シーズンを迎えることができているようです。あとはこれから少しずつトレーニングによってフィットした状態を作っていくだけです。

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話を戻すと今シーズンはチームを移籍し、Koninklijke HFCというクラブで監督をやることになりました。カテゴリーはU17です。正直な話をすればU17カテゴリーの中の3番目(1チーム15人)のチームになります。まだまだ自分の力不足と納得している反面、結果を残してクラブを見返したいと思うばかりです。さて今シーズンはどうなることやら。。。

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実はこのクラブ、オランダで一番古いクラブとして知られています。

1879年にPim Mulierという青年がイギリスからフットボールを持ち帰り、それをきっかけにこのクラブが設立されました。始めはラグビーのみがプレーされましたが、1886年に初めてAmsterdam Sportというチームとサッカーの試合を行ったようです。それ以降はサッカークラブとして活動しています。

詳細はこちら:https://en.wikipedia.org/wiki/Koninklijke_HFC

(Pim Mulier)

現在、子供から大人まで約1000人の選手が所属しており、アマチュアクラブの中でもトップを走っています。トップチームはオランダ3部のリーグ所属し、プロ契約を結んでいる選手が7人から8人在籍しています。また、育成においてもリヌス・ミケルス賞(育成部門においてその年に最も評価されたクラブに与えられる)を受賞したことがあり、De voetbal trainerというサッカー雑誌が決めるアマチュアクラブランキングでも約3700クラブある中で2017年は第3位に輝きました。また、Ajaxと提携している他、オランダサッカー協会が指定している地域の強化クラブとしても認められています。それもあって指導者の入れ替わりも激しく、生き残れるかわかりませんが、学べるだけ学んで楽しみたいと思います。

 

引き続きよろしくお願いします。

オランダではほとんど守備のことは話されず、いつも攻撃のことばかり。(最近、変わりつつありますが)今日は少し守備について考えてみることに。この人の話しが分かりやすく興味深かったのであとまとめてみました。

https://michaelbealeblog.wordpress.com/my-coaching-journey/

守備においてキーポイントとなるのは以下の3つ。

(1) Space (2) the maths of the situation (3) 1v1 mentality

(1) Space

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これは非常にシンプルな考えでフィールドを3当分して考え、チームとしてどこから守備をしたいのかということを設定するということです。フィールドの高い位置?真ん中?低い位置?これはゲームプランやチーム状況などによって色々変わってくるかなと思います。ここで重要なことは日々のトレーニングによって、いつこれをどのように使い分けるのかということを選手たちに理解させなければなりません。これがコーチの見せ所で難しいポイントですね。

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(2) the maths of the situation

これは攻撃時、守備時のゲームを読むということに繋がります。

チームとして守備をするときに、まず相手のフォーメーションを観ます。それを観ることでアドバンテージを握りことができます。アドバンテージ、この考え方、興味深いですね。選手たちにこう伝えたら勝手に見始めるかもしれません(オランダ人コーチはアドバンテージというより当たり前のようにこれを確認します。)簡単に言うと相手のDFが3人なのか4人なのかということです。

彼曰く、なぜこの情報が必要なのかというと、それは2つ。

①相手チームは何人でどのように攻撃してくるのかという計算を可能にしてくれること

②自チームがどのように守備的にスペースをカバーすることができるのかという計算を可能にしてくれること

■状況1

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相手のCB(青色)がボールを持ち、白色のCFがプレッシャーをかけるタイミングを待っている状況。アドバンテージという考えの中では、ここで10vs8が作れるかどうかという状況。サイドバックが2色のカラーで表されているのはボールを持つ状況と持たない状況がくることを意味しています。赤色の選手たちは白色の選手たちがボールを通させたくない選手たち。

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白色のCFが相手のCBにプレッシャーをかけ、さらに同じサイドのサイドバックにボールを出させてチーム全体でボールを奪いにいく。このタイミングで10vs8の状況を作り出すことに成功。数的有利な状況となりあとはボールを奪うのみ。

■状況2〜1人の選手が退場したら〜

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1人の選手が退場した場合、どのように守備をしたら良いでしょうか?それを選手たちは知っているでしょうか。1-4-3-3のチームオーガニゼーションに対して1-4-3-2もしくは勇敢にも1-3-3-3?様々な状況によってこれは異なるかと思います。皆さんはどうしますか?

例えば、1-4-3-2を選び、GKがボールを持ったとき、もしくは相手CBがボールを持ったとき、2人のFWにそれぞれサイドバックとCBの間に立たせてみたら、、、

the maths of the situationの守備においては、状況を見て考えることができるチームであるかどうか、さらにはコレクティブなオーガニゼーションを保てるかどうかがポイントになってきます。

(3) 1v1 mentality

サッカーにおいて(特に守備において)1vs1に勝つというメンタリティーは非常に重要でやはりこれがベースです。

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例えば1-4-3-3のチームオーガニゼーションと対峙するチームオーガニゼーションを見て考えると上の図のようになります。赤いポイントが1vs1の状況が生まれている場所です。チームとしてオーガニゼーションを整え、良い準備をすることは大切です。しかし、それと共に1vs1の状況において勝つために強く、アグレシッブに戦わなければなりません。まずはタックルをすること。これがゲームを支配するスタートポイントです。

最終的に1vs1に勝てば点を取られることもないんだよなと改めて思ったり。サッカーには本当に答えがなく、他のコーチや国から学ぶことでまた違う発見がありますねなりますね。今日はこの辺で。

今回は選手のスカウトについて興味深いコラムがあったので要約してご紹介。かなり要約していますが(笑)

 

多くのプロクラブは多くの若い選手をスカウトし、集めています。でも、これはお金や時間の無駄かもしれません。実はこのスカウト活動、調査や研究結果とは相反するものだそうです。1992年アメリカの哲学者,Lewis Termanはインテリジェンスと社会的成功の相関関係に関して調査しました。この調査はアメリカ、カリフォルニアの小学校でIQ-testの結果が優秀(IQ135以上)であった1500人を対象としました(top 0,6% of 250.000 children)。この調査は彼らが死ぬまでフォローされたそうです。ここで期待されたのは後のトップの学者、ノーベル賞受賞者、トップの経営者などがこの子供たちから生まれることでした。

実際のところ、このIQ135以上の人たちは明らかに成功したとは言える集団とはなりえませんでした。この内31人の人たちはトップの座に上り詰めたものの、多くは普通の人たちとなんら変わらない生活を送っていました。(ほんの少しだけ社会的に地位が高かったようです。)

ここで興味深いことはこのIQテストを受けたIQ135以下の人たちの中からWilliam Shockley、Luis Alvarezという2人のノーベル賞受賞者が生まれてしまったということです。2人はIQテストの結果があまりよくなかったわけです。よってこの研究は期待ハズレの結末を迎えてしまったようです。

さてここからが本題。サッカーにおいてはどうなのかということです。インテリジェンスは感覚的な運動の才能とは対象的で測定可能な才能と言えます。Termanはあの時点で250.000人の子供からインテリジェンスに満ちた子供たちを選びました。しかし、後に世界のトップになる人材を選び損ねました。悪く言えば、彼は彼らを除外したわけです。あの時点でIQテストの結果が悪かっただけで優秀な人材として選ばれなかったわけです。Termanは間違ったセレクトをしてしまっていたわけです。

野望、努力、動機が誰がトップに行けるかどうかを決める?

このグループが29歳になった時、もう一度IQテストが実施されました。結論から言うとTermanは約60%のタレントを見つけられていられなかったようです。この時点での優秀な人材は自分自身によって時間をかけて成長していました。(当時のIQはあまり関係なかったようです)

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最終的にこの研究、調査からIQと健康的で社会的な成功は確かに密接な関わりを持っているが、野望、忍耐力、努力、動機こそがタレントになることにおいて大きな役割を担っているということが結論付けられました。その目標に対してハードワークし、高いモチベーションを持っていればトップに辿りつけるということです。

スカウトマンは常に小さな子供の隣にいるけれど。。。。。

サッカーの世界では常にそれが現実である。プロクラブは子供たちが小さな内にスカウトしてしまいます。ただそこでは標準化された測定可能なテストに基づいて子供たちがスカウトされているわけではありません。特にアマチュアクラブではスカウトマンの主観に基づいて行われている。Termanでさえトップタレントを見逃してしまっているのに、サッカーのスカウトマンはどれくらいのタレントを見過ごしているのであろうか。

15年後に21万人の何人がサッカー選手になれるのか?

多くの子供たちは7,8,9,10歳の内にすでにスカウトされています。オランダには約21万人の7歳から11歳の子供たちがサッカーをしています。その内2万人は才能に溢れており、その内2000人が非常に優れたサッカー選手で、その内の100人がベストプレイヤーと位置付けられています。実際のところ、この選手たちが15年後にプロ選手になっているのでしょうか?それを考えるのは少し難しいところです。誰がプロ選手になり、彼らはどこに住んでるのでしょうか?

スカウトマンの主観によって15年後にプロのサッカー選手になれる選手を発掘できる確率はあるのでしょうか。確率論的には0.01%だそうです。

さらに言えば、このスカウトマンはベストな100人から選手をスカウトしているはずです。それなのになぜ?

さらにある研究からこの100人からはプロのサッカー選手になることは100%ないとのことです。なぜなら才能ある選手は直線的ではなく、不安定な曲線を描きながら成長していくからだそうです。

今、ベストな選手は10年後もベストな選手であることは往々にしてありません。それはスポーツにおけるタレントの研究結果からも導かれています。1500人のオリンピック選手を対象としたドイツの研究によれば今、現在ベストな選手が10年後もベストな選手になっているという相関関係は全く見られず、いくつかのスポーツでは非常にネガティブな相関関係が見られたそうです。また、Ackermanの研究によると例えスーパーなスカウトマンが10人中7人の才能ある選手を正しく識別していたとしても、その選手たちが10年後にトップに昇り詰める可能性はたったの0.2%しかないそうです。言葉を変えればスカウトされた1000人の中、10年後にはたった2人しかトップに上り詰めないということです。たった2人です。

クラブは間違った選手たちを教育、トレーニングしている?

Potentie van voetballers
サッカー選手のポテンシャル。
右下に分類される選手⇨ 度々スカウトされる(早熟, 体が大きい, フィジカルが強い)
左上に分類される選手⇨ほとんどスカウトに引っかかることはなく、後から成長を遂げる。

スカウトマンは今、ベストな選手ではなく、10年から15年後にベストな選手をスカウトしなければならないはずです。しかし、上のような統計や事実からこのようなスカウトという仕事は非常に困難で不可能なことのように見えます。スカウトマンが供給できないだけでなく、最終的な結果に大きく影響を与えるような変数が多く存在しています。

才能ある選手と敵、チームメイト、コーチとの関わりに関する問題についても目を向けなければなりません。コーチたちは才能のある選手の成長、思春期、フィジカルの向上、怪我、プライベートな問題(両親の離婚、引越し、精神的な問題、モチベーション、ストレス、バーンアウト)に遭遇します。子供たちは数え切れないほどの出来事に遭遇しますが、逆に言えばそれ全てが成長に繋がる要素となることとも捉えることができます。

さらにスカウトマンはその年代の特徴、早熟な子供に目を眩まされるはずです。この観点だけでみてもスカウト活動は50%は間違った方向に進んでしまいます。

水は濡れていて、火は熱い。才能はフィールドを走っている。

タレント識別において、思春期の子供のスカウトは0.5%から0.1%の当選確率の賭け事に他なりません。私は優秀なスカウトマンでタレント発掘に優れた嗅覚を持っていると主張するスカウトマンは自分の考えや存在意義の無意味さを露呈していることに他なりません。Nicolas Anelkaは5秒でその選手に才能があるかどうか判断することができると述べている。それは、本当におめでたいことで彼はミリオネアになれるはずです。でも実際は。。。。スカウトは本当に意味のない活動かもしれません。空は青く、水は濡れていて火は熱い。そして、フィールドではいつもタレントが走り回っている。この事実は変わりません。けれでもどれだけ才能が未来に走っていても誰もそれを見ることや知ることはできません。

スカウト活動が意味していることは自動的に才能ある選手を除外していることかもしれない。

オランダには多くのタレントが眠っていますが、そこには障害が多くあります。クラブが才能ある若い選手をスカウトすることは、お金や時間の無駄になる、そう考えるとアマチュアクラブに任せておいた方がよっぽど良いのではないかという話になります。

クラブはこの方法論に基づいて自己充足的予言(selffulfilling prophecy)を作成している。いわゆるスカウトマンの予言“子供たちはよくなる”は外れる。しかし、彼らは建設的にタレントになれるかもしれないだけではなく、多くの良いトレーニングを受けることに変わりはないであろう。多くのサッカー選手は正しいかわからない方法のもとある曲線の上に乗っている。このレベルでの成長、育成に関する話は今後も続いて行くだろう。

全ての子供たちは良いコーチを得なければならない。

オランダサッカー協会が現状を把握し、前に進もうと動き出したことは本当にオランダサッカーにおいて重要なことです。間違った道に進んでいることをよく見ること、それは発展プロセスの最初のスタートでもあります。スカウト活動は本当に間違った方向に進んでいます。もしどんな若い子供たち、選手たちがトップになれるかを判断することが不可能であればこのスカウト活動はやめにして、選手たちを本当に良い方向に導かなければなりません。

hoe breder de basis, des te hoger de pyramide kan worden!

裾野が広ければ、より大きなピラミッドができる!

コラム:http://www.daardan.nl/2017/02/profclubs-leiden-de-verkeerde-voetballertjes-op-stop-met-scouten/

才能をどう見分けるか。本当に難しい問題ですよね。。。多くは主観的意見で、あの選手はタレントだと言っても他の人からすればそうでないことは往々にしてありますよね。さてどうやって解決して判断していくべきなのか。やっぱりデータかな。

去年の10月からKoninklijke HFC というクラブのU15で研修をしてきました。オランダのチームで研修するためにはライセンススクールに通っている必要があります。(最初はそう言われました。笑)逆を言えばライセンスを取得するためには必ずどこかのクラブ、チームに研修しに行かなければなりせん。1シーズンそのチームの監督に弟子入りさせもらうわけです。

私は今シーズン、ライセンススクールに通っていませんでした。完全なる例外というわけですね。(笑)。いくつかのクラブに断られながら勉強させてもらえる場所を探すこと約半年。やっと見つけたのがこのクラブ。色々とこだわりを持って探していたので少し時間がかかってしまいましたが。

指導歴約20年のこの監督。最近、Ajaxのアカデミーからオファーがあったとかなかったとか。でも、彼はFeyenoordのファンという(笑)。この監督オランダでは珍しく鬼軍曹です。でも全てが計算されていてどのタイミングで怒るかをいつも考えています。もちろん、褒める時は褒める。

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(U15全スタッフ、左から研修生、チームマネージャー、アシスタントコーチ、監督、ラインズマン兼チームマネジャーサポート)

さてさて先週、やっと全ての公式戦が終了しました。結果は、リーグ戦、カップ戦ともに優勝です!!!さらに凄いことにスタッフや選手たちはあまり気にしていませんでしたがまさかの公式戦無敗だった。今年のセルティックと一緒です。これにはアカデミーダイレクターも興奮していました。

 

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慣れと共に自分の役割も少しずつ変化していきました。最初はただただ横に立って話を聞いているだけで、それから段々と監督から意見を聞かれたり、相談されるようになり、スカウティングやトレーニングもさせてもらえるようになりました。なんだ君は???というスタートから考えれば凄い進歩です。ちなみにこのクラブには日本人、アジア人は私一人しかいません。これをネガティブに捉えれば相手にされないだとか差別とかにになりますが、ポジティブに捉えればすぐに覚えてもらえるということです。本当に日本人、アジア人は私しかいないので。物は捉えようですね。(クラブ会員が多いので他にいたらごめんなさい。)

結論言えば最高の研修だったということです。

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今日はこの辺で。

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